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RSウイルス感染症
病原体であるRSウイルスが、患者の鼻水、痰などと接触したり、咳などを浴びることで感染し、気管支炎、細気管支炎、肺炎を起こす病気です。
1歳までに50-70%、3歳までにすべての子供がRSウイルスに初めて感染します。乳幼児、特に6か月未満の赤ちゃんが感染すると重症になる傾向があります。流行する時期は、一般には9月から4月頃までで、12月中旬から1月がピークです。
症状
咳や鼻水、鼻づまりなどのかぜの症状で始まりますが、しだいに咳がひどくなり(夜間咳で眠れなくなる)、ゼイゼイと苦しそうな呼吸になります。嘔吐などの胃腸症状がみられる事もあります。
2-3日38-39℃台の発熱が続きますが、解熱しない場合は中耳炎を併発することもあります。
治療
特効薬はありませんが、去痰剤などを処方します。熱が続き、夜間の咳がひどい場合は、漢方薬の処方も考慮します。
また、中耳炎を引き起こした場合は抗生剤を処方します。1歳未満の乳幼児は細気管支炎や肺炎、中耳炎などを引き起こし入院が必要なことがあります。
家で気をつけること
1) 室内の加湿:暖房で部屋が乾燥しないように気をつけて下さい。
加湿器をつけるか洗濯物を室内で干したりしてもよい。
2) 水分補給;咳がひどい時は温かい飲み物を少しずつ飲ませましょう。
痰がきれて咳が和らぎます。
3) 食べ物;特に制限はありませんが、咳がひどい時などは、咳でもどす
ことがあるので、お腹いっぱい食べさせないようにしましょう。
スギ花粉症
春先(2月中旬)にスギ花粉が原因で起こるアレルギー性鼻炎・結膜炎を「スギ花粉症」と呼びます。最近では、幼児でもめずらしくはありません。
下記の症状がみられたら、当院で検査が受けられますので、ご相談ください。
症状
鼻・・鼻がムズムズし、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまりが、長く続きます。
鼻づまりのため、頭がボーとしたり、不眠になることもあります。
眼・・眼のかゆみ、充血、涙目。眼をこするとまぶたが赤く腫れることがあります。
検査
鼻水の中の好酸球(アレルギーを起こす白血球)が増加します。
血液中のスギ花粉特異IgE(アレルギーを起こす抗体)が上昇します。
治療
1)抗アレルギー剤の内服;
最も一般的な治療薬です。鼻水や眼のかゆみを止める作用があり、最近は眠気の少ない薬があります。スギ花粉の飛散が開始する1ー2週間前(1月末から2月初旬)から内服すると効果的です。
2)抗アレルギー剤の点眼薬:1日2回の点眼でよい点眼薬もあります。
3)ステロイドの点鼻薬; 症状が強いとき、短期間だけ使います。
4)当院では、スギ花粉の舌下免疫療法を行っています。ご希望の方はご相談ください。
手足口病
<原因>
原因は、コクサッキーウイルスA16、A10、A6,エンテロウイルス71など、複数のウイルスによります。毎年流行するウイルスが替わり、臨床像も少しずつ異なります。
<症状>
手足口病は、その名のとおり、手足、口に発疹ができる病気です。
手足には水泡が、口の中には口内炎ができます。舌にできることもあり、痛みがあります。熱はほとんどないことが多いですが、2日程度の短期間の発熱がみられることがあります。発疹は手のひら、足の裏、ひざ、おしりなどに比較的よく見られます。症状は通常は比較的軽く、数日で回復しますが、口内炎、特に舌にできた場合は痛みが強く食事や水分がとれずに脱水になる場合があります。合併症としては、無菌性髄膜炎、脳炎、心筋炎、急性弛緩性麻痺などがあります。無菌性髄膜炎、脳炎はエンテロウイルス71による手足口病が流行したときに多く発症するといわれています。
<治療>
特別の治療はありません。自然に回復を待つのみです。口内炎がひどい場合には、痛みどめや口内炎の内服薬を処方することがあります。脱水になってしまった場合は点滴なども行うことがあります。
<家での注意>
口内炎がしみないような飲み物、口当たりの良いもの(プリン、ゼリー、アイスクリーム、さましたおじやなど)を与えて下さい。薄味のものがよいでしょう。
とびひ
<原因>
すり傷や虫さされ、あせも、湿疹などにばい菌が入りこんで、水ぶくれができて、すぐにつぶれてじゅくじゅくした発疹になります。水ぶくれにはたくさんのばい菌がいるので、かいた手で他の所をかくと、そこにまた水ぶくれが『飛び火』します。
<治療>
1) ぬり薬:基本的には抗生物質のぬり薬で治療します
2) 抗生物質:とびひの範囲が広かったり、ひどい場合は抗生剤の内服も行います。
ぬり薬はすっかり治るまで続けて下さい。
完全に治りきらないうちにやめてしまうと、またぶりかえします。
<家で気をつけること>
1) お風呂:とびひの範囲が広い場合に禁止することがありますが、基本的
には石鹸を使って体をきれいに洗いシャワーで流して下さい。
2) 手を洗う:爪を切ってよく手を洗い清潔にすること。
3) 虫さされ、あせもができた時はできるだけ早めに治療しましょう。
4) タオルは、別々にしましょう。
5) プール:とびひが乾燥して完全に治るまで控えましょう。
6) 保育園:とびひがひどいときは1—2日休むことがあります。
7) 治療していてもよくならず顔や体が赤く腫れてきた時はすぐに受診して下さい。
溶連菌感染症
原因
溶連菌という細菌が原因で、唾液などのによってうつります。潜伏期間は2-3日で、幼稚園や小学校で集団発生することがあります。溶連菌感染症のあとにまれに急性腎炎やリウマチ熱を起こすことがあるので、きちんとした診断と治療が必要です。
症状
のどの痛み、熱、体や手足に赤く細かい発疹、嘔吐などの胃腸症状がみられます。数日するとイチゴのようにブツブツした舌になり、治り際に指などの皮がむけることがあります。
免疫が十分にはできないので、家族に感染して同じような症状が出たり、何度も繰り返したりするときは家族全員で治療することが必要になります。
治療
のどの検査で溶連菌がいることがわかれば、抗生剤を5-7日間飲みます。抗生剤が良く効く病気なので、2日間抗生剤を飲むと、熱が下がり、のどの痛みもなくなり、他の人にうつることはなくなります。しかし、数日で抗生剤を中止すると症状がぶり返すことがあります。しっかり治療しないと急性腎炎やリウマチ熱を起こすことがあるので、医師の指示通りに最後まで飲むことが重要です。
家での注意
抗生剤が良く効くことが多く、1-2日で症状が軽快します。のどが痛いときは、熱いものや辛いもの、すっぱいものは避けましょう。入浴は、熱がなければかまいません。家族にもうつるので、予防のためにはうがい、手洗いをしましょう。保育所、学校は、抗生剤を2日間飲んで、発熱、発疹、のどの痛みが良くなれば登校可能です。
検査
溶連菌に感染しているかどうかは、のどを綿棒でこすり、迅速検査で5分程度で診断がつきます。
ヒトメタニューモウイルス感染症
<原因>
気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症をひきおこすウイルスの一種です。1-3歳の幼児の間で流行することが多いですが、大人にも感染します。乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。1年中発症が確認されていますが、3-6月にかけては、とくに感染者が数が増加する傾向にあります。
< 症状>
風邪の症状に似ていますが、咳、鼻水は1週間程度、熱も多くの場合、4-5日程度続きます。症状が悪化すると、ゼイゼイ(ヒューヒュー)という呼吸(喘息様気管支炎、細気管支炎)がみられ、呼吸困難となることがあります。
<治療>
特別な治療法はなく、基本は各症状を楽にするための対症療法を行います。咳や鼻水のお薬や解熱剤を処方することがあります。また、同時に細菌にも感染してしまうことも少なくありません。熱が4日以上続く場合は、細菌にも感染している可能性があり、その場合は抗生剤を処方します。熱が長引く場合は、中耳炎や細菌による肺炎などを起こしている可能性があるので、早めに受診してください。
<家での注意>
ヒトメタニューモウイルスは、咳やくしゃみで吐き出されたウイルスがついたり(飛沫感染)、気がつかないうちにウイルスに触れてしまったり(接触感染)することで感染します。保育園、幼稚園、小学校などで集団感染する可能性があり、家に帰ってきたら、手洗い、うがいを徹底しましょう。家庭内でも、ウイルス感染が広がらないように、マスクを借用する、タオルや食器を別々にするなど感染対策をしましょう。
<検査>
ヒトメタニューモウイルスの迅速診断キットは、鼻咽頭を細い綿棒でぬぐった後、5-15分程度で診断できます。
けがをした時の湿潤療法について
切り傷、すり傷をした時に、消毒薬で消毒しガーゼを張ったりしてませんか?
消毒薬は、傷のタンパク質と反応して細菌を殺す効果がなくなる一方で、傷を治す細胞を死滅させてしまい、傷の治りを遅くしてしまいます。また、ガーゼで保護すると傷が乾燥してしまい、傷を治そうとする細胞は乾燥により容易に死滅し、傷の治りを著しく遅らせることがわかっています。
湿潤療法とは?
湿潤療法(しつじゅんりょうほう)は、創傷(特にすりきず)、やけど、褥瘡(床ずれ)などの皮膚潰瘍に対し、「消毒をしない」「乾かさない」「水道水でよく洗う」を3原則として行う治療法です。モイストヒーリング、閉鎖療法、潤い療法(うるおい療法)とも呼ばれています。軽度の擦り傷においては、もともと皮膚にいる細菌に対する耐性が高く、壊死組織や異物(土砂や小石)が傷になければ消毒しなくても化膿することはほとんど無いと考えられています。
湿潤した環境の方が傷の治りがよいことは欧米においては1960年代後半から知られており、湿潤環境を保ち傷を治すという概念はすでに存在していました。しかし全世界的に普及はしておらず、日本国内でも消毒してガーゼをあてる治療法が主流でした。しかし、ようやく2001年ごろから形成外科医のある有名な先生が、積極的に湿潤療法を行い、急速に普及が図られています。当院でも、擦り傷や火傷の患者さんに湿潤療法を行い、傷がきれいに治り有効な治療法であると考えています。
家庭でできる簡易的な湿潤療法
家庭での治療は、軽度のすり傷、切り傷に限って用いられるべきであり、化膿した場合、破傷風予防の観点から、野外での創傷(軽度の擦過傷を除く)、特に木枝や錆びた釘、鉄条網などによる怪我、動物にかまれた傷(狂犬病)などは、家庭では治療を行わずに病院を受診してください。
1)すり傷の場合、大量の水道水、あるいは清潔な水で傷口の汚れを完全に洗い落とします。この時、決して消毒をしてはいけません。土や砂などの異物がある場合は、これをきれいに取り除いてください。うまく取れないときは病院を受診して下さい。また出血があれば圧迫して止血を行ってください。止血が困難な場合などは、家庭で治療を行うべきではありません。
2)傷をきれいに水で洗った後は、家庭用の食品ラップなどを傷より大きめに切り、傷に当てる(保湿効果のある白色ワセリンをラップに塗り患部に当てるとなお良い)。
3)貼ったラップを包帯、医療用紙テープなどにより固定する。
4)ラップは1日に一回。夏などは1日に数回取り替える。この際、流水などで創傷周囲の周囲を洗うこと。薬局などで売っている湿潤療法用絆創膏(キズパワーパッドなど)であっても特に問題はありません。ただしコストは高いです。
5)傷の周囲の皮膚は、特に夏場にかぶれなどにより痒みが強くなりますが、かゆみどめ等の薬剤の使用は控え、ラップ療法を中止し、医師の診察を受けてください。
6)傷がピンク色になり新たな皮膚ができ、痛みがなくなれば治癒完了です。
7)傷が治った部分の皮膚はしみになりやすいため、少なくとも一ヶ月は紫外線に注意してください(衣服により物理的に日光を遮断するなど)。
次のような場合は、直ちに家庭療法を中止し、病院を受診してください。
- 傷の周囲に不自然な発赤、腫れ、むくみなどが見られる場合。
- 痛みが改善しない場合。膿や血液、浸出液が出続ける場合。
- 発熱、悪寒がある場合。
もっと詳しいことを知りたい場合は、リンクの新しい創傷治療を参考にしてください。
あざについて
あざにもいろいろな種類がありますので、色に分けて説明します。
Q;おなかの濃い茶色のあざは?
赤ちゃんが生まれた時からある茶色のあざは扁平母斑と言って、赤ちゃんでよくみられるあざの一つです。原因はよくわかっていませんが、残念ながら自然に消えることはありません。大きくなったり、悪性化することはないので治療の必要はないため経過観察して問題はありません。ただし、1.5cm以上の大きさの扁平母斑が体に6個以上みられる場合は神経線維腫症と言う全身の病気の可能性がありますので、病院を受診してください。また、できている場所によっては美容上の問題で、希望される場合はレーザー治療なども行われることがありますが、数か月で元に戻る可能性もありますのであまりお勧めはできません。
Q;青いあざについて?
1)背中、特におしりのあたりにある淡い青あざは蒙古斑と言われているものです。手や足にもみられ蒙古斑のような青あざは異所性蒙古斑といいます。蒙古斑は2歳をピークに次第に消退し、通常は4,5歳頃までにほんとんど自然消失します。異所性蒙古斑も通常の蒙古斑より消退時期が遅れますがほとんど消失するといわれ治療を急ぐ必要はありません。しかしながら中には存在する部位や範囲、色調が目立つ場合は、児や家族の精神的苦痛を配慮し、早期のレーザー治療の適応になることもありますのでご相談ください。
2)おでこの青っぽいあざは?
顔面、頭部の青あざには、うすい青色の場合は自然に消失する異所性蒙古斑の場合もありますが、太田母斑や青色母斑と呼ばれる消失しないものもあります。太田母斑は褐青色でレーザー治療の適応になります。また青色母斑は、結節や局面を形成するもので、レーザー治療や切除が必要となります。共に早期の治療がよいとされていますのでご相談ください。
Q;赤あざについて?
1) まぶたの赤いあざはサーモンパッチと呼ばれ、毛細血管が拡張したもので、うなじやおでこにみられることもあり、赤ちゃんの30-50%にみられ多くが1-2年以内にほとんどが消えます。
2) ほっぺにある濃い赤あざは単純性血管腫というもので、自然に消えることはありません。治療方法は早期からのレーザー治療に効果があります。
3) 生まれた時にはなくて徐々にイチゴ状に盛り上がってきた赤あざは、イチゴ状血管腫といって中に血管が多く、血液を含んでいるので赤く見えます。新生児期以降は数か月は大きくなりますが1歳頃から小さくなり始め消失しますので経過観察でよいと思います。ただ大きい場合や部位によっては治療が必要となるので専門医に紹介することがあります。
みずぼうそう(水痘)について
みずぼうそうは、子供のうちにかかるのが当然と思っていませんか?
みずぼうそうは「ワクチンで予防する病気」です。
「ほんとうはこわい、みずぼうそう」
みずぼうそうの患者数は、毎年約120-150万人で、軽症と思われがちですが、年間で重症化し入院する人が約4千人あり、死亡例も約20人みられ、実は注意が必要な病気です。みずぼうそうは感染力が強く、周囲のたくさんの人にうつしてしまい、保育園、幼稚園では流行します。感染すると、7-10日ほど園や学校に行くことができなくなります。体の抵抗力が弱い人や生まれてすぐの赤ちゃんは重症化する可能性が高く、特に注意が必要です。また、みずぼうそうに対する免疫を持たない妊婦さんが妊娠初期に感染すると、おなかの赤ちゃんが先天性水痘症候群という病気(四肢の形成不全、低体重、精神発達遅滞など)を持って生まれる可能性があります。また、みずぼうそうにかかったあとも、ウイルスは一生涯体の中にひそんでいて、ときどき免疫が低下した時に帯状疱疹を発症させます。4歳までの患者さんが80%とされています。2014年10月から公費負担となりますので、1歳を過ぎたら予防接種を受けましょう。現在の予防接種スケジュールでは、1歳過ぎに1回目、3-4か月後に2回目の接種が推奨されています。
りんご病
<原因>
春から夏にかけて、毎年りんご病が流行します。りんご病は、ヒトパルボウイルスB19というウィルス性の感染症です。頬がりんごのように赤くなる特徴から、その名前が付けられました。
<症状>
初めは咳、鼻水、微熱が出るなど風邪と似たような症状から始まりますが、1週間くらい経つと、両方の頬に発疹が出て赤くなり、しだいに手足へ広がってレース状のまだらな発疹が出ます。発疹はかゆみがあり、潜伏期間は4~12日で、飛沫感染します。
まれに脳炎、脳症、心筋炎といった合併症を起こすことがあります。
<治療>
ウィルス性の感染症に効く薬はありませんので、基本的には症状を和らげる対症療法を続けながら自然治癒を待ちます。熱が出ることもほとんどなく、発疹は通常5~7日ほどで消滅します。発疹のかゆみを抑える抗ヒスタミン剤や、関節痛を和らげる鎮痛剤を処方します。お風呂で長く温まると、かゆみが強くなることがありますので、入浴は短時間で済ませましょう。また運動したり、日光に当たっても、同様にかゆみが強く出てしまいますので、発疹が引くまでは室内でおとなしく過ごすようにしましょう。
<感染>
感染力があるのは、風邪症状が出ている間(つまり、頬が赤くなる前)なので、りんご病の診断が付く頃にはすでに感染期を過ぎています。子どもが元気なようなら、登園・登校しても構いません(登園・登校許可証の必要がない病気のひとつです)。
妊婦さんが感染すると、流産や死産のリスクが高くなりますので、妊娠中に家族が感染したことがわかったら、産婦人科を受診することをお勧めします。しかし、この病気は有効な予防接種もなく、症状が現れる頃にはすでに感染期を過ぎてしまっているので、予防するのは難しいのが現状です
水いぼ
7月になると学校や幼稚園・保育園でプールが始まります。しかし、この時期に毎年流行するのが「水いぼ」です。自然に免疫ができて治る病気ですが、学校や園の方針で、「水いぼがある子はプールに入れない」というところに通っているお子さんの場合は、治療が必要です。
<原因、症状>
水いぼは、伝染性軟属腫ウィルスによって接触感染する皮膚疾患です。中に白い芯のある柔らかい粟粒大のいぼがワキの下、おしり、顔、腕、手足などに現れます。水いぼ自体は通常かゆみを伴わないのですが、肌の弱い子はかゆみのある発疹を併発する場合があります。特に肌の弱い子やアトピー性皮膚炎の子は、出たり治ったりを繰り返すことがあります。
<感染>
水いぼは感染力が強く、一緒に遊んでいる時やお風呂やプールなどで肌が擦れ合ったりすると、破れたいぼからウィルスが飛び散って他の人に感染すると言われていますが、確たる根拠はありません。恐らく、水いぼになりやすい子は、皮膚のバリアー機能が弱いのではないかと言われています(ちなみに大人で水いぼはほとんどみかけませんね)水いぼができても、ウィルスに対する抗体が1年くらいで作られると言われており、通常は放っておいても自然に治るものですが、確実とは言えません。自然に治ると信じて放っておいたら、完治するのに数年かかったとか、全身に広がって大変な思いをしたというケースも稀にあります。
<治療>
いぼの数が増え続けてなかなか治らない場合や、症状が悪化しやすいアトピー性皮膚炎のお子さんの場合には、皮膚科でピンセットでつまんで取ったり、液体窒素でいぼを凍結して取るのことがありますが、この治療法はいぼがある程度大きくなるまで待たなければならない上に、ひとつずつ摘除するのにかなりの痛みを我慢しなければなりません。尚、痛みを和らげるテープを使う方法もありますが、子どもにはテープの薬の副作用があり勧められません。水いぼは、漢方薬を内服して体の中から治すという方法もあります。五苓散とヨクイニンという漢方薬を1,2か月内服することで、体の免疫力を高めます。民間療法ではハトムギ茶を飲むと効果的だと言われていますが、これはハトムギにはヨクイニンという免疫効果を促進する成分が含まれているからです。
当院では、痛みを伴わない治療として、漢方治療を勧めています。
インフルエンザ
症状
インフルエンザウイルス、A型、B型の感染によって起こります。
症状は、突然の急な発熱(39℃台)がほとんどで、咳や鼻水、頭痛、嘔吐などを伴ったり、関節痛を伴うこともあります。咳や鼻水は初期には軽度で、徐々に増強します。熱は、3~4日続き、1日下がってから再び上昇し、1週間ほどみられることもあります。
診断
学校、幼稚園、保育園での流行状況、診察所見、症状、検査結果をもとに診断します。一般的には鼻から細い綿棒をいれて、鼻水を採取しインフルエンザウイルスがいるかどうかを検査します。しかし非常に痛みを伴いうため当院では、鼻をかんでもらい出た鼻汁で検査します。約10分でA型、B型の診断ができます。熱が出てから、すぐ(数時間程度)の検査であるとインフルエンザであっても陰性となることがあります。正確な判定には熱が出てから、少なくとも6—8時間経過してから検査することが重要です。
治療
タミフルという内服薬とリレンザ、イナビルという吸入薬がありともにA型、B型のインフルエンザに効果があります。インフルエンザウイルスが体の中で増えるのを抑える働きがあります。熱が出てから、48時間以内に内服しないと十分な効果がみられません。タミフルは、1歳以上の子供が投与の対象になります。なお、下痢や嘔吐などの副作用があります。また、せん妄、興奮といった副作用を起こす可能性もあります。吸入薬は5歳以上の子供さんでドライパウダーを吸入できる子が対象となります。タミフルによる異常行動の報告もあり、同じ効果が期待できる漢方薬の処方を行う事もあります。解熱剤は高熱の状態の方がウイルスが増えるのを抑えるためなるべく使用せずに様子観察することが大切です。
予防
予防接種が最も有効な方法です。毎年、流行が12月末から始まり、1月末がピークとなるため、遅くとも12月中旬には予防接種を終了する必要があります。小学生以下は、より確実な予防効果を得るために2回接種(3~4週週間隔で)が必要です。ワクチンによる予防効果は、3~4ヶ月持続します。流行するインフルエンザのタイプが異なり、ワクチンの予防効果が少なくなるため、毎年予防接種が必要です。ワクチンを接種していても感染する可能性があり、流行時には手洗い、うがい、規則正しい生活を心がけ、なるべく人ごみを避けることが大切です。
ロタウイルスによる胃腸炎
毎年、11月から4月までの冬に流行(ピークは1月から3月頃)します。生後6ヶ月から2歳までが好発年齢です。白色便性下痢症とか、仮性コレラとも呼ばれます。潜伏期間は約2日です。
原因
ロタウイルスによって起こる胃腸炎で、患者さんの便の中に出てきたロタウイルスが、手やタオルなどを介して、口の中に入って感染します。ロタウイルスにより汚染された水や食物を飲食したり、おもちゃをしゃぶったりしても感染します。
症状
水のようにサラサラした白っぽい下痢が約1週間ぐらい続きます。病初期には激しい嘔吐を伴うのが普通です。咳や鼻水・熱を伴うこともあります。
治療
特効薬はありません。必要に応じて、吐き気止めや整腸剤・おしりかぶれに対する軟膏などを使用します。脱水症状(顔色が悪い、元気がない)があれば点滴が必要になります。
家での注意
【病初期の嘔吐を伴う時期】 数時間はのませたり食べさせたりはしない方がよいでしょう。しかし、ぐったりしてくるようであれば受診が必要です。2~6時間たって吐き気がおさまってくれば、湯ざましや麦茶などをごく少量(5~30ml)から始め、徐々に量を増やしていきましょう。
【嘔吐がおさまって下痢だけの時期】 水分だけでなく、電解質(とくに塩分)とカロリーの補給も大切になってきます。電解質はおみそ汁や野菜スープの上ずみで、カロリーは温かいお粥やうどん・パンなどを少しずつあげましょう。市販のイオン飲料は電解質濃度が低く、糖分が高いので適切ではありません。 母乳がでれば、この時期は母乳だけでもかまいません。 おしりをこまめに洗って、おむつかぶれを予防してあげましょう。
予防法はよく手を洗うことです。自分のトイレのあと、子どものトイレを手伝った後、おむつを替えた後、調理・配膳・食事の前には、よく手を洗いましょう。手を洗った後、同じタオルを何回も使うことは、好ましくありません。
マイコプラズマ感染症
マイコプラズマ感染症とは?
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)というウイルスと細菌の間に位置する微生物が原因となって多彩な症状を呈します。飛沫感染(咳やクシャミなど)しますが、感染力はそれほど強くなく、家族や同一学級などの密接な環境下で伝播します。潜伏期間は1-3週程度と考えられています。
症状
発熱、咳、頭痛、倦怠感などが主症状です。病初期には乾いた咳ですが、次第に湿った痰のからむ咳にかわり、夜間にひどくなる頑固な咳が長く続きます。熱が下がらない場合は肺炎を起こすことがあり、マイコプラズマ肺炎と呼びます。気管支喘息の発作を誘発して、胸がゼイゼイすることがあります。
診断
血液検査;白血球は正常範囲あるいは少し増加 CRP(炎症反応)は陽性
胸部レントゲン;マイコプラズマ肺炎を起こした場合は、スリガラス状の陰影を生じます。一側性のことが多く、40%は右下肺野に陰影を認めます。
治療
肺炎マイコプラズマは細胞壁をもたないので、通常のペニシリン系、セフェム系の抗生剤は無効です。マクロライド系(クラリス、エリスロシン、ジスロマックなど)抗生物質が有効です。最近マクロライド系抗生物質に耐性のマイコプラズマ肺炎が多くみられ、ミノマイシンが有効ですが副作用の点で8歳以上しか使用できません。
合併症
3~4%に中枢神経症状(髄膜炎、脳炎)、8~15%に消化器症状(下痢、嘔吐、食欲不振、肝機能異常)、3~30%に発疹などが生じることがあります。
ヘルパンギーナ
原因
症状
のどの奥に小さなみずぶくれができ、38から40度の発熱が2-3日続きます。のどが痛いので、食欲がなくなり、小さい子はつばを飲み込むのも痛いのでよだれが多くなります。高い熱が続き、水分もとれなくなると脱水症状がみられます。
治療
特別な特効薬はありません。咳、鼻水、痰などがある場合は内服薬を、発熱に対しては解熱剤を処方します。抗生剤はまったく効果がありません。
家での注意
のどが痛く食欲がなくなるので、口当たりの良いもの(プリン、ゼリー、アイスクリーム、さましたおじやなど)を食べさせてください。水分補給が大切ですが、オレンジジュースなどすっぱいものはのどにしみるので控えましょう。飛沫感染するので、兄弟などがいる場合は、コップや食器は別にしましょう。潜伏期間は2—3日です。
ノロウイルスによる胃腸炎
原因
口からノロウイルスが入り、小腸粘膜で増殖することにより発症します。
ノロウイルスに感染した人の嘔吐物にウイルスが含まれています。吐物の処理が不十分だと(例えば 雑巾をよく洗わずに室内に干すと)、ウイルスが乾燥して舞い上がり、口から入って感染する恐れがあります。 感染した人の便にもウイルスが含まれています。手洗いが不十分なまま料理をすると、その食品が原因となり、食中毒として感染が広がります。 人から排出されたウイルスが、河川を経て海にたどり着くと、カキなどの二枚貝に取り込まれて蓄積されます。その貝を不十分な加熱で食べることによっても感染します。
(いわゆる「カキにあたった」のは、このことです。)
症状
突然の嘔吐で始まり、半日から一日続きます(激しい嘔吐ははじめの3~4時間)。
ついで下痢が1~3日続くこともありますが、下痢のない人の方が多いようです。
発熱することもありますが、ほとんどは1日で軽快します。潜伏期間(ウイルスが体に入って発症するまで)は、12~48時間です。
治療
はじめの3~4時間の激しい嘔吐に対しては、よい治療はありません。吐き気がおさまるまでは何も口にしないことが重要です。吐き気がおさまったら、少しずつ水分をあたえてください。一気にたくさん飲むと吐いてしまうので注意してください。
家での注意
おう吐物や便で汚れた衣類などを片づけるときは、なるべくビニール手袋、マスクなどを用いましょう。汚れた衣類・雑巾類は、流水でよく洗った後にハイターなどの塩素系漂白剤でつけ置き洗いをしましょう。床は、塩素系漂白剤を含ませた布で被い、しばらくそのまま放置して消毒しましょう。 汚物の片づけが終わったら、よく手を洗い、うがいをしましょう。
アデノウイルス感染症
原因
アデノウイルスの中には、40種類以上の型があり、のどの腫れ、目やに、目の充血以外にもいろいろな症状をひきおこします。扁桃炎だけをおこすタイプ、結膜炎だけをおこすタイプ(流行性角結膜炎、いわゆるはやり目)、また、血尿と排尿時の痛みを訴える出血性膀胱炎や、急性胃腸炎の原因になるタイプもあります。
アデノウイルスによる急性咽頭炎、プール熱
急に40度近い高熱(5-7日続くこともある)、咽頭炎(のどが真っ赤)、扁桃炎、全身倦怠(ぐったりする)が主な症状です。時に目が真っ赤に充血し、目やにがたくさん出て、腹痛や下痢を伴うこともあります。
診断
のどの粘膜を綿棒でこすって、アデノウイルス迅速診断キットを使ってウイルスの有無を検査します。
治療
特別な特効薬はありません。咳、鼻水、痰などがある場合は内服薬を、発熱に対しては解熱剤、目の充血には点眼薬を処方します。抗生剤はまったく効果がありません。
家での注意
高い熱が何日も続くので、水分を十分にとり、涼しい部屋で安静に寝かせましょう。のどが痛いので食欲がなくなるので、口当たりの良いもの(プリン、ゼリー、アイスクリーム、さましたおじやなど)を食べさせてください。目やにがある場合、その中にウイルスがいるので、感染することがありタオルは別々にした方がいいでしょう。
医師の許可があるまでは登園、登校は控えてください。